10章 思考3:意思決定と問題解決
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認知心理学('13)
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10-1. 意思決定
10-1-1. 効率と確率
意思決定(decision making)
効用(utility)の追求
利益(主観的な満足度)
期待効用(expected utility):効用×確率
10-1-2. 多属性意思決定
多属性意思決定
実際の意思決定では、選択肢が異なる属性を持っており、それぞれ効用が異なる
どのような決定方略があり、どれが有効か
効用を数値化して合計する
それぞれの属性を主観的な効用に変換する
選択肢がたくさんある場合は頭の中でする計算の負担が最も小さくて、その割には効用の大きい選択肢を選べる可能性が高い(Payne, Bettman, & Johnson, 1993)
10-1-3. 人間の意思決定
人間の意思決定はかならずしも常に最適を目指しているわけではない
満足化原理(satisficing principle)
手近の選択肢のなかに「まずまず」のものがあれば、それを選ぶという決定方略
サイモン(Simon, 1957)
以降、人間の意思決定が「最適」や「合理的」からずれている場合が多く発見された
10-1-4. フレーミング効果
アジアの疾病問題(Tversky & Kahneman, 1981)
4つの対策の客観的価値は全て同じ
主観的価値が客観的価値に比例すると仮定→主観的価値でもどの対策でも等しくなる
ほぼ半々になるはずだがそうはならない
肯定的表現→確実を好む
否定的表現→不確実を好む
フレーミング効果(framing effect):表現のしかたを変えるだけで意思決定が変わる
10-1-5. プロスペクト理論
フレーミング効果はなぜおこるか
プロスペクト理論(prospect theory)
5つの仮定
主観的価値は客観的価値とは比例しない
主観的価値の軸と客観的価値の軸は基準点(reference point)で交わる。
基準点を境にして利得と損失にわかれる
関数は非線形、基準点から離れるにしたがってなだらかになっていく
利得の領域では関数の傾きはゆるく、損失の領域では急になっている
基準点はフレーミングによって変化する
200人が助かる→基準点:-600 (600人が死亡する)
400人が死亡する→基準点:0 (誰も死亡しないことを基準)
フレーミング効果以外にも人間の意思決定が合理的な決定からずれる現象をいくつも説明できることが知られている
10-2. 問題解決
10-2-1. 問題解決と意思決定
問題解決
選択肢が非常に多い
どのような選択肢がありうるか
その確率もはっきりしない
思考研究
現象記述的な研究
認知革命後は情報処理プロセスに関する研究
10-2-2. 機能的固着
2本紐問題(Maier, 1931)
10分以内にペンチを使った解決法を出せたのは39%
機能的固着(functional fixedness):機能が固定観念になり、他の機能を持っていることに気づきにくくなる
→メイヤーの2本のひも問題
10-2-3. 一般問題解決器
一般問題解決器(General Problem Solver : GPS)
問題解決の情報処理モデル
サイモンとニューウェル
ハノイの塔
問題空間(problem space):すべての可能な状態と関係
問題解決とは初期状態から目標状態に到達するためのルートを探すこと
操作子(operator):ある状態から別の状態に移動するために打つ手
手段—目標分析(means-ends analysis)
一般問題解決器では、現在の状態と目標状態の差を小さくするという方法が基本
役立つ操作子を探して適用する
10-2-4. 副目標の設定
副目標(subgoal)
目標状態に到達する手前の状態
一般問題解決器は副目標の設定という方略のほかにもいろいろな方略を備えている
10-2-5. 情報処理モデルの利点
人工知能(artificial intelligence)
思考がどのように実行されているかを確認することができる
プロダクション・システム
サイモンとニューウェル
プロダクション:IF-THEN
ACT:Adaptive Control of Thought(Anderson, 1976-2005)
プロダクション・システムを手続き記憶として使ったコンピュータ・シミュレーション
10-2-6. 現実の問題解決
良定義問題(well-defined problem)
初期状態や目標状態、操作子などがはっきりしている問題
不良定義問題(ill-defined problem)
人間が現実場面で直面する問題の多くははっきりしていない
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